新規事業を始めようとする際、多くの方が「どこから手をつけるべきか」「このまま進めて、本当に成功するのか」といった不安を抱えるものです。事業を成功に導くためには、やみくもに進めるのではなく、目的や各プロセスを整理し、事業の「設計図」を明確に構築することが重要です。
新規事業には、アイデアを形にする「創生フェーズ」と、具体的に事業化を図る「事業化フェーズ」があり、各段階で直面する課題を乗り越えるためには、事業計画書の役割が大きな意味を持ちます。この「設計図」をしっかりと作りこむことで、事業の実現可能性が高まり、目標達成への道筋がはっきりと見えてくるのです。
今回は、これらを踏まえ、新規事業の進め方について詳しく解説します。
新規事業の進め方:「事業計画書」の作成
魅力的で説得力のある事業計画書を作成するためには、単に「どのように事業を進めるか」だけでなく、「なぜその事業を行うべきなのか」という目的と構想を含め、現実的な要素も網羅することが求められます。具体的には、市場環境や収支計画といった実際的な情報を盛り込むことがポイントです。
ここでは、事業計画書の各構成要素をひとつずつ順に解説します。各項目を整理しながら情報をまとめていくことで、事業計画書の内容が明確になり、新規事業を一歩前進させるための基盤が整います。
新規事業アイデアの草案や思い付いた背景、事業コンセプト、事業モデルなどの情報をまとめる
新規事業を進めるうえで、事業コンセプトの組み立ては、事業の骨格を作る非常に重要なプロセスです。新規事業の基本的なコンセプトや背景・目的・求められる価値などを明確に示します。後から作成する事業計画書も、この事業コンセプトが基盤となります。しっかりとした事業コンセプトを構築することで、事業の方向性や運営上の重要な判断に役立ち、事業の成功につながります。
特に、明確で独自性のあるコンセプトは、競合他社との差別化に役立ちます。ユニークな価値を顧客に提供することで、市場でのポジションを強化し、競争優位性を確保することが可能です。
次に、事業を通じて顧客にサービスを提供し、収益を生み出す仕組みである事業モデルを考える必要があります。事業モデルには、以下の4つの要素が含まれます。
誰に(WHO):ターゲットとなる顧客層
何を(WHAT):提供する製品やサービス
どのように(HOW):その製品やサービスをどのように提供するか
なぜ(WHY):その提供が自社の収益につながる仕組み
ここでの「なぜ(WHY)」は、製品やサービスがどのようにして収益を生み出すか、つまり収益を上げる仕組みを指します。同じ製品やサービスを提供していても、事業モデルが異なれば競合他社との差別化が可能です。
例えば、AmazonとeBayは同じ「商品販売」というカテゴリーの中でも異なるビジネスモデルを採用しています。
Amazonは「小売」モデルを採用し、自社の倉庫で商品を管理し、自社で販売を行います。ユーザーが商品を購入すると、Amazonが直接商品を発送するため、在庫管理や物流に強みを持っています。
一方、eBayは「マーケットプレイス」モデルを採用しており、売り手と買い手をマッチングさせるプラットフォームです。eBayは自社で在庫を持たず、取引ごとに手数料を徴収することで収益を上げています。
このように、同じカテゴリーの製品やサービスを提供していても、ビジネスモデルの違いによって競争優位性や市場価値を創出することが可能です。それぞれの企業は、ターゲットとする顧客層や市場環境に応じて異なるアプローチを採用しており、これが事業の成功を左右する要因となります。
事業コンセプトと事業モデルの構築は、新規事業の方向性を明確にし、他社との差別化を図りながら持続可能な収益モデルを作り上げるための重要なステップです。
市場調査・競合調査を行い、需要の確認や戦略立案に向けた情報を集める
市場調査や競合調査は、新規事業の成功率を大きく左右する非常に重要なプロセスです。市場調査の主な目的は、参入しようとしている市場(業界)の全体像を把握し、事業戦略の立案に役立てることです。新規事業を成功させるためには、市場を深く理解することが不可欠です。
市場調査は、業界レポートや公開データ、企業の年次報告書などの過去のデータを基に現在の市場を分析し、商品やサービスを効果的に売り出すための戦略を立てます。市場調査には定量調査と定性調査の2つの主要な手法があります。
定量調査
定量調査は、数値や量で示されるデータを集計・分析・活用する手法です。明確な数値をもとに、市場の規模や成長率、競合のシェアなどを測ることができ、事業戦略に具体的な指針を与えます。
定性調査
定性調査は、インタビューや行動観察を通じて、数値化できない新しい理解やヒントを得る手法です。消費者の意見や行動パターン、心理的な要因など、潜在的なニーズを把握する際に有効です。
新規事業の初期段階では、参入する市場の成長性やトレンド、競合の動向を把握することが重要です。この情報を基に、事業が展開可能かどうかを判断します。例えば、拡大傾向にある市場や、競争が比較的少ないニッチな市場を見つけることが、新規事業にとって有利な戦略となります。
市場調査を行う上で最も重要なのは、調査目的を明確にすることです。調査の目的が、製品やアイデア創出のための情報収集なのか、消費者の顕在ニーズやライフスタイルの変化を把握するためのものなのかによって、調査手法や分析方法が異なってきます。目的が明確であれば、それに応じた調査設計が可能になり、戦略策定に適したデータを集めることができます。
このように、目的に応じた市場調査を実施することで、より正確で効果的な新規事業の戦略を立案することが可能となります。
顧客のニーズを仮説検証し、アイデアの修正を行う
新規事業で仮説検証を行う目的は、事業アイデアやビジネスモデルが実際に機能するかどうかを、実際のデータやユーザーの反応を通じて検証することです。具体的には、アイデアがターゲット層のニーズに適合し、事業としての需要があるかどうかを見極めることを目指しています。このプロセスにより、ビジネスアイデアに対して立てた前提(仮説)が正しいかどうかを、定量的・定性的なデータを用いて確認することが可能になります。また仮説検証を繰り返すことで、事業の精度が向上し、次のステップに進むための重要な基盤が築かれます。
仮説検証で最も大切なのはスピードです。時間をかけすぎて仮説の検証が遅れるよりも、初期段階で仮説を設定し、即座に行動してフィードバックを得ることが重要です。フィードバックを通して、課題を発見し、必要に応じて新しい仮説を設定することで、次の検証に役立つ有用な情報が得られます。
また、仮説をわかりやすく設定することが重要です。チーム内で仮説検証の結果を共有する際に、わかりやすい表現にしておくことで、全員が理解しやすくなり、検証作業も円滑に進められます。
事業計画書、売上予測、資金計画などを作成する
いよいよ事業をスタートするために必要な資金を積算し、その調達方法(自己資金、借入など)を検討する段階です。資金調達にあたっては、金融機関が納得できる売上予測を事業計画書に提示し、適切な融資額を決定します。希望通りの融資を受けるためには、精度の高い売上予測が不可欠です。
新規事業の場合、過去の実績がないため、売上予測を立てる際には特に慎重な準備が求められます。具体的な流れとして、まず売上予測を算出し、予測期間を設定します。次に、業種や業態に適した算出方法を選び、必要なデータを収集します。こうして集めたデータをもとに、損益分岐点と売上予測を実際に計算し、最終的に融資希望額を算定します。
次に、新規事業の財務的な展望を提示します。利益予測やキャッシュフロー、損益計算書などのデータを基に、将来の収益性や健全性を示す数値を算出します。この数値データをもとに、実際の数値と予測データを比較し、さまざまなシナリオで事業がどのように推移するかを考慮し、事業の収益性を明確に提示することが求められます。
また、資金計画では、新規事業に必要な規模、調達方法、タイミング、返済計画などを具体的に示します。資金を調達する目的を明確にするため、新製品の開発や新しい事業展開、市場拡大のためのマーケティング活動など、資金の用途をリストアップし、それぞれの項目にどれくらいの資金が必要かを詳細に計算します。
資金調達を行う
新規事業を立ち上げる際の資金調達方法には、大きく「出資」「融資」「補助金・助成金」の3つがあります。それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、内容をよく理解し、自社の状況に合った方法を選択することが重要です。また、事業を運営する中で資金が不足しないよう、計画的な資金調達を心掛けることが求められます。
出資とは、将来的な成長を見込み、特定の団体や事業に対して資金を提供することです。代表的な例として、エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)からの出資、クラウドファンディングなどがあります。
融資は、金融機関などから資金を借りる方法で、一定の返済義務が課されます。具体的な方法として、起業家や中小企業が資金を借りやすくする「制度融資」や、日本政策金融公庫、銀行、信用金庫からの融資があります。補助金・助成金による資金調達も、新規事業の有効な方法の一つです。
これらの方法については、以下の記事で詳しく解説しています。新規事業の立ち上げ資金調達について補助金や助成金、融資などを紹介しているのでぜひご確認ください。
関連記事
製品やサービスの開発をする
製品やサービスの開発においては、以下のポイントをしっかりと把握することが重要です。
まず、提供する製品やサービスの概要、特長、そしてなぜそのサービスが顧客ニーズを満たすのかを明確にすることが求められます。また、製品やサービスのライフサイクルも考慮し、特許取得や技術的な問題の確認、さらには開発に必要な期間や資金の見積もりも行う必要があります。
さらに、開発に投入した資金をどの程度の期間で回収できるかを見定めることも重要です。これにより、資金の投入規模や販売価格を決定するための判断材料が得られ、資金の投入限度や販売戦略の指針が明確になります。こうした分析を行うことで、ビジネス全体の収益性を考慮した適切な決断が可能になります。
次のステップとして、実際の製品やサービス開発に移ります。ここでは、量産化やサービス提供開始前に、プロトタイプの制作やテストを行うことが重要です。実際の使用環境における課題や改善点を確認することで、完成度の高い製品やサービスを提供し、顧客満足度を高めることにつながります。
このように段階ごとに要点を把握し進めることで、より高品質な製品やサービスの提供が可能になり、事業の成功に寄与します。
マーケティング戦略立案を行う
新規事業のマーケティング戦略においては、市場調査とマーケットリサーチの連携が重要なポイントとなります。マーケティング戦略では、市場調査を通じて顧客理解や競合調査を行い、内部環境と外部環境を整理します。その上で、マーケティングリサーチによって、具体的な商品やサービスがターゲット市場にどのように受け入れられるか、将来の市場動向を把握し分析します。
この一連のプロセスによって、「誰に」(ターゲットの特定)、「どんな価値のものを」、「いくらで」(商品やサービスの提供価値を決定)、「どのように」提供するかを決めることが、マーケティング戦略の核となります。
新規事業の成功において、市場調査に基づいた顧客理解や競合調査は非常に重要な役割を果たします。特に、新規事業では市場やユーザーニーズに不確定な要素が多いため、各検討ステップに合わせて柔軟に対応できる体制の構築が欠かせません。
新規事業に必要なマーケティング戦略の主なステップとしては、市場調査や市場の細分化、ターゲティング、ポジショニングが挙げられます。また、内部環境や外部環境を分析する際には、PEST分析、3C分析、SWOT分析などのフレームワークが有効に活用されます。これらの分析ツールを用いることで、事業の全体像を把握し、適切な戦略を策定することが可能です。
戦略に沿った戦術を決めていく
マーケティング戦略が決定した後は、具体的な計画を実行するための最適な戦術(施策)を定めていきます。ここでは、ターゲット顧客へのアプローチ方法、プロモーション戦略の概要、価格設定などを詳細に検討し、事業成長の基盤を築く施策を整備します。マーケティング施策が売上に直結するため、適切な施策の実施が事業の成長に大きな影響を与えます。
代表的なマーケティング施策には次のようなものがあります。
コンテンツSEO
GoogleやYahoo!などの検索エンジンで上位表示を狙い、ターゲット層に向けた情報発信を行う手法です。SEO施策は効果が現れるまでに時間がかかるものの、成功すれば安定した集客が期待できます。
SNS運用
Twitter、Instagram、Facebookなどで公式アカウントを作成し、顧客層に応じた情報を発信します。ターゲット層と直接コミュニケーションを図ることができ、認知度向上やブランディングに効果的です。
広告運用
各種媒体に広告を出稿し、短期間で広範囲にリーチできます。リスティング広告、ディスプレイ広告、SNS広告など様々な種類があり、即効性がある施策ですが、コストもかかるため、予算に応じた計画が必要です。
各施策にはそれぞれコストや即効性などの特徴があるため、メリットとデメリットを理解し、目的に応じて適切に運用することが求められます。
また、マーケティング施策の成功には次の点も重要です。
ターゲットやポジショニングの明確化
顧客層や競合との差別化ポイントを明確にし、ターゲット層に響くメッセージを発信することがポイントです。
購入や契約に至るまでのプロセス整理
顧客が購入や契約に至るまでのプロセスを理解し、適切なタイミングでアプローチできるように準備します。
顧客データの収集と管理
施策を通じて得られた顧客データを収集・分析し、改善に活かします。データの有効活用により施策の精度が向上し、より効果的なマーケティングが実現できます。
適切な人材を集め、実行していく
新規事業推進チームにおいて、役割分担はチーム全体の生産性向上や目標達成に不可欠な要素です。役割分担を適切に行うことで、チームの一体性が高まり、各メンバーのスキルを最適に活用することができます。
新規事業立ち上げのチームにおける主な役割は以下の通りです。
プロジェクトマネージャー:新規事業全体を総括する責任者。
プロジェクトリーダー:分担された役割の担当責任者。
プロジェクトメンバー:具体的なタスクを実行するメンバー。
役割分担は、チーム内でタスクを適切に分割し、各メンバーの専門性を最大限に引き出す手法です。役割分担を効果的に行うためには、まず各メンバーのスキルや経験、得意分野を把握し、それぞれに合った具体的な役割とタスクを明確に割り当てることが重要です。
新規事業を成功に導き、役割分担を効果的に機能させるためには、チームの一体感が欠かせません。そのために、以下の3つの要素を意識して取り組むことが効果的です。
まず、チーム全体で共通の目標を持つことが大切です。新規事業の達成という大きな目標に向かって、各担当者が自分の目標を細分化することで、チーム全体として一体感が生まれやすくなります。
次に、事業の進捗や課題を共有し、それらを解決するための議論やアイデア交換を定期的に行うことで、メンバー間の理解が深まり、一体感が生まれます。
また、各自が自分の役割を理解し、その役割が全体の目標達成にどう寄与するのかを把握し、それを他のメンバーにも共有することで、「自分の役割がチーム全体の成功に繋がっている」という認識が醸成されます。
さらに、新規事業を推進するためには、組織のフレームワークや各役職の責任範囲・役割を明確にすることも重要です。組織図を活用することで、組織構造を視覚的に伝えるとともに、各役職の機能や連携関係を示し、メンバー間の理解と協力を促進します。
こうして役割分担を通じてチーム全体が一体となり、新規事業の成功に向けて前進することが期待されます。
評価と改善
新規事業では、事業のアイデアや目標達成度、方向性について、売上や収益、市場動向などさまざまな視点から評価を行う必要があります。定期的に事業の実績を検証し、その結果をもとに改善を重ねることで、提供する製品やサービスの質を向上させ、事業の持続性を高めることが可能です。
新規事業の評価には、以下のような段階ごとの評価があります。
アイデアの評価:新規事業の立ち上げ時における事業アイデアの評価です。これにより、アイデアの妥当性や市場ニーズとの適合性を確認します。
事業推進時の目標評価:事業推進段階では、設定した目標に対する進捗を評価し、必要に応じて戦略の調整を行います。
撤退判断のための評価:事業の収益性や持続可能性が見込めない場合、撤退を検討するための評価を行います。撤退基準を定めておくことで、無駄なリソース投入を防ぎ、合理的な意思決定をサポートします。これらの評価基準をあらかじめ定めておくことで、事業の戦略策定や意思決定が容易になり、効率的なリソースの活用が可能となります。
新規事業の最適化を図るために、次のような具体的な手法が役立ちます。
顧客のフィードバック収集:顧客の意見を反映し、製品やサービスを改善するための重要なデータとします。
マーケティング評価:市場での製品やサービスの認知度や反応を確認し、集客戦略を見直す材料とします。
競合企業との比較:競合分析を行い、差別化のポイントや改善すべき点を明らかにします。
財務パフォーマンスの健全性の確認:収益性やコスト管理の観点から財務健全性を把握し、持続可能な成長を支えます。
このような評価手法を通じて新規事業の品質や競争力を向上させ、長期的な事業成功に向けた基盤を築くことができます。
新規事業の進め方に迷ったら、誰かに相談するのもおすすめ
消費者のニーズや市場環境の変化が著しく、移り変わりの早い現在、多くの企業が新規事業に取り組んでいます。新規事業を立ち上げる際には、未経験の課題に直面することも多く、どのように進めるべきか迷っている方も多いでしょう。
ここでは、新規事業担当者が抱えがちな課題について、外部支援をうまく活用する方法をご紹介します。
新規事業をアイデアや計画立案などは新規事業コンサルサービスに相談
新規事業コンサルサービスとは、数あるコンサルティング分野の中で新規事業の開発に強みを持つコンサルティングを指します。企業が新しい事業を立ち上げる際、初期段階から効果的なサポートを受けられるサービスです。
新規事業のアイデアや計画立案においては、アイデアの創出や事業モデル化に多くの時間がかかることが多くあります。また、製品やサービスのニーズを正確に把握するための競合調査や、事業性の評価・検証に関する知見やノウハウが不足していることもあり、これが課題となります。
こうした課題を解決するためには、新規事業に関する専門知識を持つコンサルタントに相談することが効果的です。新規事業コンサルサービスでは、アイデア創出から事業モデルの策定に至るまで、具体的かつ戦略的なサポートが提供されます。これにより、企業は効率的に事業を立ち上げられるようになります。
特に新規事業のノウハウがない企業にとって、新規事業コンサルサービスは大きな助けとなるでしょう。
資金関連は税理士に相談
新規事業の資金関連の手続きは、自社内のリソースでも対応可能です。しかし、新規事業立ち上げ時にはやるべきことが非常に多く、その中で税理士のように税務や会計処理に強いプロの力を借りることで、税務・法務・財務など様々な側面で事業をより効率的に進めるためのアドバイスが期待できます。ここでは、税理士に相談する主なメリットを紹介します。
まず、税理士は税法に精通しており、事業計画に基づいて最適な税務戦略を立案できます。起業前に税理士に相談することで、最適な事業構造や節税対策を検討できる点は大きなメリットです。
さらに、税理士は法的な規制や申告義務にも詳しいため、新規事業において遵守すべき法的要件や義務を把握し、事業運営を安定させるためのサポートが得られます。これにより、複雑な手続きや法律違反のリスクを減らすことが可能です。
また、税理士は財務分析や予算策定にも精通しているため、適切な資金計画の策定や資金調達のアドバイスを受けることで、事業資金を効率的に管理し、必要に応じて資金調達の支援も受けられます。
新規事業の資金調達においては、助成金や補助金を利用することも有効な手段です。税理士は事業計画書などの資料作成に精通しており、助成金や補助金の審査を通過しやすくするためのサポートを提供できる点も強みです。
このように、税理士に相談することで資金関連の手続きがスムーズに進み、新規事業を成功に導くための重要なパートナーとなることが期待されます。
マーケティング関連は各専門分野の企業へ相談
マーケティングは、新規事業の成否を左右する重要な要素です。新規事業には市場や顧客ニーズといった不確定な要素が多いため、これらを理解し、適切に対処するマーケティング戦略が不可欠です。そのため、マーケティング活動には市場調査や市場分析、ターゲティング、ポジショニングといった段階ごとの取り組みが含まれます。
マーケティングの主な役割は、消費者のニーズを的確に特定し、製品やサービスが多くの消費者に求められる施策を考えること、そして顧客と最適なコミュニケーションを取ることです。これにより、製品やサービスが市場で確実に受け入れられるための土台が整います。
また、新規事業のマーケティングを成功させるためには、専門的なマーケティングコンサルティングを活用することも有効です。コンサルタントの支援により、企業は自社の製品やサービスを効果的に提供するための戦略を立案し、実行し、必要に応じて改善していくことが可能になります。
無料で相談するなら公的なサービスの利用
新規事業を進める際には、各段階に応じて適切な専門家のサポートを受けることが、プロジェクトを円滑に進めるための効果的な方法です。特に、立ち上げ初期の段階では、豊富な知識と経験を持つ専門家のアドバイスが大きな助けになります。
多くの組織が新規事業の相談窓口を設けており、たとえば税務署、商工会や商工会議所、日本政策金融公庫などでは無料で相談に応じています。これらの窓口を活用することで、初期段階での不安や疑問を解消しやすくなるでしょう。新規事業立ち上げの第一歩として、こうした支援機関の利用を検討することも有効な方法です。
これらの方法については、以下の記事で詳しく解説しています。新規事業の立ち上げ相談先一覧を公的機関と民間に分けて紹介しています。また、相談内容別の専門家についても紹介しているのでぜひご確認ください。
新規事業のアイデアが出ないときはどうすればいい
新規事業において有望なアイデアをどのように見つけるかは、新規事業において誰もが日々悩む事が多いことと考えられます。新規事業は、事業化するまでに不確実性の高いものもあり、数多くのアイデアを創出し、検討を進めながらその中で生き残る案件をすすめることが求められます。
独自性の高いアイデアを生み出すポイント
独自性のある良いアイデアを生み出すためには、以下のような考え方が有効とされています。
まず、自社の事業に関する枠から一度離れて、全く異なる視点で考えてみることが重要です。既存事業を活かすことも大切ですが、ゼロベースでの発想が新たなアイデア創出には欠かせません。新しい視点を得るためには、異なる分野や業界の事例に目を向けてみるのも良い方法です。
次に、アイデアの質にこだわらず、まずは量を重視することがポイントです。最初の段階では多くのアイデアを集め、質の判断は後で行います。量を重視することで、思いもよらない発想が生まれやすくなり、最終的に独自性の高いアイデアにたどり着く可能性が高まります。
さらに、集めたアイデアや要素を組み合わせることで、新しいアイデアが生まれることもあります。異なる視点やコンセプト同士を掛け合わせることで、独自性や新しさを持ったアイデアに発展させることが可能です。これはブレインストーミングなどで出たアイデアをグループ化し、新たな切り口として組み合わせる際にも有効です。
また、企業側の目線に加えて、顧客の目線でアイデアを考えることも大切です。顧客目線もさらに細分化し、性別や世代、生活環境など、さまざまな視点から考えることで、これまで気づかなかった課題が見えてくることがあります。
新規事業のアイデア出しにはビジネス用フレームワークの活用が効果的です。フレームワークを用いることで、データや情報を整理したり、新たな発想を生み出したりでき、市場のニーズに応えつつ、新規性や収益性も備えた事業アイデアを考えることができます。1つの方法に固執せず、複数の方法やフレームワークを組み合わせることで、視点を広げてみましょう。
最後に、アイデアを出す前には、社内外のデータを収集することも重要です。収集したデータは新規事業立ち上げのプロセスに役立ちますので、十分に時間をかけて情報収集を行ってください。
これらの方法については、以下の記事で詳しく解説しています。新規事業の立ち上げアイデアの出し方について紹介しています。また、新規事業立ち上げの壁打ちにおすすめのサービスも紹介しているのでぜひご確認ください。
関連記事
新規事業の立ち上げを成功させるためのフレームワーク一覧
新規事業の立ち上げには、アイデアの創出からニーズの調査や分析、事業モデルの構築まで、各フェーズごとに多くのプロセスが存在します。こうしたプロセスを効果的に進めるためには、考え方を整理し、課題を明確にすることが不可欠です。ここで役立つのが、ビジネスにおけるフレームワークです。フレームワークは、思考の整理や課題の解決を助ける便利なツールであり、戦術や戦略をチーム内で共有する際にも、共通の理解を得やすくするために役立ちます。
新規事業の立ち上げに役立つ代表的なフレームワークについても見ていきましょう。フレームワークには多くの種類があり、それぞれ異なる特性や強みを持っています。そのため、自社の目標や課題を明確にした上で、適切なフレームワークを選択することが重要です。また、必要に応じて複数のフレームワークを組み合わせて活用することで、さらに効果的に事業を進めることができます。
アイデア出しに役立つフレームワーク
マンダラート
マンダラートは、アイデアの創出や思考の整理、目標達成に役立つフレームワークです。この手法は、曼荼羅(まんだら)模様に似たマス目の形式を用い、中心のテーマを取り巻くようにアイデアやキーワードを埋めていくことで、思考を広げ、深めていきます。マンダラートを活用することで、視覚的に情報を整理し、新たな発想を促すことができます。
SCAMPER(スキャンパー)法
SCAMPER法は、既存のアイデアをさまざまな角度から見直し、検討することで、新しいアイデアを拡張・派生させる手法です。この手法では、7つの視点(Substitute, Combine, Adapt, Modify, Put to another use, Eliminate, Reverse)を通じて発想を広げていきます。短時間で多くのアイデアを生み出せるため、商品開発やサービスのアイデア出しなど、さまざまな分野で汎用的に活用されています。
ニーズの調査・分析に役立つフレームワーク
ポジショニングマップ
ポジショニングマップは、縦軸と横軸に設定した2つの指標を用いて、自社および競合他社の製品やサービスをマップ上に配置し、視覚的に分析する手法です。これにより、競争状況や市場における自社の立ち位置を一目で把握でき、差別化の方向性や戦略の検討に役立ちます。
STP分析
STP分析とは、市場を「セグメンテーション(Segmentation)」によって細分化し、「ターゲティング(Targeting)」で狙うべき市場を選定し、「ポジショニング(Positioning)」で競合との差別化を図ることで、効果的なマーケティング戦略を策定する手法です。
3C分析
3C分析は、企業を取り巻く環境を分析するためのフレームワークです。この分析の目的は、マーケティング戦略の策定に必要な情報を収集し、方向性を決定することにあります。「Customer(顧客・市場)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの要素を分析することで、自社の強みや弱み、市場機会、顧客ニーズを明確化し、内外にわたる自社の強みと弱みを把握する手法です。
新規事業の評価で役立つフレームワーク
アンゾフの成長マトリクス
アンゾフの成長マトリクスは、新規事業の成長性や市場での競争優位性を評価するためのフレームワークです。「商品」と「市場」、「既存」と「新規」の視点から事業の方向性を分析し、効果的な成長戦略を検討する際に用いられます。
プロダクトライフサイクル
プロダクトライフサイクルは、新規事業の戦略やマーケティング手法を判断する際に適したフレームワークです。製品のライフサイクルを「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4段階に分けて分析し、各段階に応じた戦略を立てるのに役立ちます。
まとめ
事業計画書の作成は、新規事業を進める上で重要なステップです。計画書をまとめるためには、ポイントを押さえた上で、十分な準備時間も必要になります。
この記事では、事業計画書に必要な項目を一つずつ整理し、納得感と魅力のある計画書を作成するための参考にしていただければ幸いです。
SHUYU(シュウユ)は、中小企業の新規事業立ち上げに特化したハンズオン型コンサルティングサービスを提供しています。支援者自身が新規事業立ち上げの経験を持つ社長であるため、実践的なサポートで事業成功に導くことが可能です。ご興味をお持ちの方は、以下のリンクから資料請求をお待ちしております。